生物多様性国家戦略 2023-2030

生物多様性国家戦略2023-2030とは

「生物多様性国家戦略2023-2030」は、日本国の生物多様性の保全と持続可能な利用に関する新たな基本的な計画である。
2022年12月、生物多様性条約第15回締結国会議(COP15)で2030年までの世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、その内容を受ける形で生物多様性国家戦略の見直し検討を進め、2023年3月に「生物多様性国家戦略2023-2030」が閣議決定された。

生物多様性国家戦略 2023-2030の概略

「生物多様性国家戦略 2023-2030」の概略は次のとおり。

1.位置付け

・「昆明・モントリオール生物多様性枠組」に対応した戦略
・2030年ネイチャーポジティブの実現を目指し、生物多様性・自然資本を守り活用するための戦略

2.ポイント

・「生物多様性損失」と「気候危機」への統合的対応、ネイチャーポジティブ実現に向けた社会の根本的変革を強調
・30by30目標の達成等の取組により健全な生態系を確保し、自然の恵みを維持回復
・自然資本を守り活かす社会経済活動の推進
 (自然や生態系への配慮や評価が組み込まれ、ネイチャーポジティブの駆動力となる取組)

3.構成・指標

・同戦略の第1部(戦略)では、2030年ネイチャーポジティブの実現に向け、5つの基本戦略、基本戦略ごとの状態目標(15個)・行動目標(25個)が設定された。
 -5つの基本戦略-
  1生態系の健全性の回復
  2自然を活用した社会課題の解決
  3ネイチャーポジティブ経済の実現
  4生活・消費活動における生物多様性の価値の認識と行動
  5生物多様性に係る取組を支える基盤整備と国際連携の推進

・第2部(行動計画)では、25個の行動目標ごとに関係省庁の関連する具体的施策を整理
・各状態目標・行動目標の進捗評価のための指標群を設定
 (昆明・モントリオール生物多様性枠組のヘッドライン指標の対応指標も含む)
 https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/initiatives/index.html

生物多様性国家戦略 2023-2030:5つの基本戦略

基本戦略1 生態系の健全性の回復

状態目標1-1:全体として生態系の規模が増加し、質の向上により健全性が回復している
状態目標1-2:種レベルでの絶滅リスクが低減している
状態目標1-3:遺伝的多様性が維持されている

行動目標1-1:陸域及び海域の30%以上を保護地域・OECMで保全し、それら地域の管理有効性を強化する
行動目標1-2:土地・海域利用による生物多様性への負荷軽減により生態系の劣化を防ぎ、既に劣化した生態系の30%以上の再生を進め、生態系ネットワーク形成に資する施策を実施する
行動目標1-3:汚染の削減に資する施策を実施する(生物多様性への影響削減を目的とする排出管理を行い、環境容量考慮した適正水準とする)
      侵略的外来種による負の影響の防止・削減に資する施策を実施する
行動目標1-4:気候変動による生物多様性に対する負の影響を最小化する
行動目標1-5:希少野生動植物の保護を実施し、野生生物の生息・生育状況改善のための取組を進める
行動目標1-6:遺伝的多様性の保全等を考慮した施策を実施する

基本戦略2 自然を活用した社会課題の解決

状態目標2-1:国民や地域が地域自然資源や文化活用して活力発揮できるよう生態系サービスが現状以上に向上している
状態目標2-2:気候変動対策による生態系影響が抑えられ、気候変動対策と生物多様性・生態系サービスのシナジー構築・トレードオフ緩和が行われている
状態目標2-3:野生鳥獣との適切な距離が保たれ、鳥獣被害が緩和している

行動目標2-1:生態系が有する機能の可視化や、一層の活用推進する
行動目標2-2:森・里・川・海のつながりや地域伝統文化の存続に配慮し、自然を活かした地域づくりを推進する
行動目標2-3:気候変動緩和に貢献する自然再生推進し、現状以上の生態系の保全と活用を進める
行動目標2-4:再生可能エネルギー導入における生物多様性への配慮を推進する
行動目標2-5:野生鳥獣との軋轢緩和に向けた取組を強化する

生物多様性国家戦略2023-2030イメージ画像

基本戦略3 ネイチャーポジティブ経済の実現

状態目標3-1:生物多様性保全に資するESG投融資を推進し、生物多様性保全に資する施策に適切に資源配分されている
状態目標3-2:事業活動による生物多様性への負の影響の低減、正の影響の拡大、企業や金融機関の生物多様性関連リスク低減、持続可能な生産形態確保のための行動推進が着実に進んでいる
状態目標3-3:持続可能な農林水産業が拡大している

行動目標3-1:企業による生物多様性への依存度・影響の定量的評価、現状分析、科学に基づく目標設定、情報開示を促し、金融機関・投資家による投融資を推進する基盤整備し、投融資観点から生物多様性を保全・回復する活動を推進する
行動目標3-2:生物多様性保全に貢献する技術・サービスの支援を進める
行動目標3-3:遺伝資源の利用に伴うABSを実施する
行動目標3-4:みどりの食料システム戦略に掲げる化学農薬・化学肥料使用量の低減、有機農業の推進含め、持続可能な環境保全型の農林水産業を拡大させる

基本戦略4 生活・消費活動における生物多様性の価値の認識・行動(一人一人の行動変容)

状態目標4-1:教育や普及啓発を通じて、生物多様性や人と自然のつながりを重要視する価値観が形成されている
状態目標4-2:消費行動において、生物多様性への配慮が行われている
状態目標4-3:自然環境を保全・再生する活動への国民の積極的参加が行われている

行動目標4-1:学校等における生物多様性に関する環境教育を推進する
行動目標4-2:日常的に自然とふれあう機会を提供し、自然の恩恵や自然と人との関わりなど様々な知識の習得や関心の醸成、人としての豊かな成長を図り、人と動物の適切な関係の考え方を普及させる
行動目標4-3:国民に積極的かつ自主的な行動変容を促す
行動目標4-4:食品ロス半減及びその他の物質の廃棄を減少させ、生物多様性に配慮した消費行動を促すため、生物多様性に配慮した選択肢を周知啓発し、選択機会を増加させ、インセンティブ提示する
行動目標4-5:伝統文化や地域知・伝統知も活用し、地域の自然環境を保全・再生する活動を促進する

基本戦略5 生物多様性に係る取組を支える基盤整備と国際連携の推進

状態目標5-1:生物多様性の情報基盤が整備され、調査研究成果や提供データ・ツールが様々なセクターで利活用され、多様な空間スケールで様々な主体の連携促進されている
状態目標5-2:世界的な生物多様性保全に係る資金ギャップ改善に向け資金が確保されている
状態目標5-3:我が国による途上国支援の能力構築が進み、その結果が各国施策に反映され、生物多様性保全が進められている

行動目標5-1:生物多様性と社会経済の統合や自然資本の国民勘定への統合含めた関連分野における学術研究を推進し、強固な体制に基づく長期的な基礎調査・モニタリング等を実施する
行動目標5-2:効果的で効率的な生物多様性保全の推進、適正な政策立案や意思決定、活動への市民参加促進を図るため、データ発信や活用に係る人材の育成やツール提供を行う
行動目標5-3:生物多様性地域戦略を含め、多様な主体の参画の下で統合的取組を進める計画策定支援を強化する
行動目標5-4:生物多様性に有害なインセンティブの特定・見直し検討を含め、資源動員の強化に向けた取組を行う
行動目標5-5:我が国の知見を活かした国際協力を進める

生物多様性国家戦略2023-2030の概要

「生物多様性国家戦略2023-2030」で取り組むべき課題
「生物多様性国家戦略2023-2030」の目指す姿・2050年ビジョン
「生物多様性国家戦略2023-2030」ミッション「2030 年ネイチャーポジティブ」
「生物多様性国家戦略2023-2030」戦略実施に向けた基本的考え方

投稿者 smasa0810

“生物多様性国家戦略2023-2030とは” に1件のフィードバックがあります
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