自然環境を社会・経済・暮らし・文化の基盤として再認識し、自然の恵みを活かして気候 変動緩和・適応、防災・減災、資源循環、地域経済の活性化、人獣共通感染症、健康などの多様な社会課題の解決につなげ、人間の幸福と生物多様性の両方に貢献する自然を活用した解決策(NbS:Nature-based Solutions)を進める。
気候変動など諸課題対策と生物多様性との間でのシナジーを最大化し、トレードオフを最小化し、生物多様性を維持しつつNbSの効果を最大限発揮させる。中山間地域等にて深刻な課題である野生鳥獣との軋轢解消に向けた効果的・効率的な鳥獣管理や担い手確保を進める。

自然を活用した地域づくり

自然に関係する取組をNbS(Nature-based Solutions)観点から再評価し、NbSの実装を促進する。そのため技術的支援としてNbSの基本的考え方や実践手法を整理し普及を図る。自然環境を保全すると同時に地域経済社会を活性化させ、自然環境への保全へ再投資される好循環を形成し、自然を活かした豊かな地域づくりにつなげる。
自然資源を活用した交流・関係人口創出による都市と農山漁村のつながり拡大や、観光、野生生物を活かした地域振興、再生可能エネルギーなど自然資本・生態系サービスを活かした地域の魅力向上と経済活動の促進、有機農業など持続可能な土地利用を進める。
社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能な魅力ある国土・都市・地域づくりを進めるグリーンインフラの社会実装を官民連携・分野横断により推進する。

自然を活かした課題の統合的解決

①気候変動対策と生物多様性保全のシナジーの強化
森林や沿岸生態系など自然生態系の気候変動緩和策としての機能を発揮させるため、保護地域指定などにより自然生態系を健全な状態に保全する。
森林は、適切な整備や森林病害虫防除対策を進め、人工林の森林資源の循環利用等を通じて、不適切な管理による森林の多様な生物の生息・生育環境の喪失に対処し、自然生態系と地域経済の再生を図る。このため林地残材の活用や手入れの不十分な里山におけるバイオマス資源のエネルギー源としての活用を進める。

沿岸生態系においてブルーカーボンの隔離・貯留機能を持つ藻場・干潟や、自然由来で炭素蓄積される湿地等の保全・再生を推進する。
流域治水の取組など気候変動適応策の推進に当たり、自然環境が有する多様な機能を活かすグリーンインフラの考えを推進し、遊水地等による雨水貯留・浸透機能の確保・向上、海岸防災林による高潮・津波の減衰や海岸侵食の防止、気候変動により頻発化が進む災害に対してレジリエントな地域を作る「生態系を活用した防災・減災」の実装を推進する。

②気候変動対策と生物多様性保全のトレードオフの回避・最小化
自然の恵みの持続的享受と気候変動緩和策のトレードオフを回避・最小化し、両立させるため、再生可能エネルギー発電設備の不適正な導入による生物多様性への悪影響を防ぎ、地域の自然の恵みを損なうことなく地域の合意形成に十分配慮した地域共生型の再生可能エネルギーの積極的導入を目指す。
このため、環境影響評価制度等により、環境への適正配慮とパブリックコンサルテーションを確保する。立地規制や、事業法による事業規律の確保の取組との連携を行う。

環境保全と再生可能エネルギーの導入促進の両のため、環境保全、事業性、社会的調整に係る情報の重ね合わせを行い、区域を設定する取組や環境影響評価制度等に活用できる基礎的情報のデータベース整備を進める。
生物多様性及び生態系サービスとの関係では、再生可能エネルギー発電設備の設置促進すべき場所と自然の恵み享受のために回避・配慮すべき場所の考え方について、将来的な国土利用の在り方を踏まえた上で整理を行い、適切な立地選択や生物多様性保全への配慮のための情報提供やガイドライン作成・活用を推進し、適地に誘導する。

③身の回りにある様々な課題との統合的解決
国内バイオマス資源素材としての活用促進する利用技術の研究・開発や資源利用の拡大を図り、資源循環と里山の維持・管理を同時に推進する。地上資源の活用促進を通じて、地下資源への依存度を低下させる。
自然環境保全活動と教育・福祉分野との連携等により、自然体験や心身の健康増進と同時に、生物多
様性保全に資する場の保全を図り、感動や癒しときめきなど、自然とのふれあいから生活の豊かさの向上につなげる取組を促進する。

鳥獣の管理と棲み分けと有効利用

野生鳥獣との軋轢解消に向け、里地里山の自然資源利用やゾーニング等を通じた人と自然の棲み分けの取組を進め、捕獲した鳥獣の有効利用を進め、地域づくりに積極的に活用する。
捕獲等を行う鳥獣管理や有効利用の担い手の確保・育成に加え、最新のデジタル技術も活用した効率化・省力化の取組を進め、野生動物管理の専門人材を育成していく。
種の存続を脅かす野生鳥獣の大量死や希少鳥獣への悪影響等を生じさせる野生鳥獣に関する感染症の発生を迅速に把握・対処するため、ワンヘルスの考え方も踏まえ、必要サーベイランス等の継続・強化を行う。

基本戦略2における目標の設定

自然の恵みの持続的な享受が、人類の安全保障の根幹である自然資本を守り社会に活すには必須であり、自然を活かして多様な社会課題解決につなげ、生態系からの負の影響を軽減するための状態目標を設定する。それらの達成に向け、生態系が有する機能を持続的かつ効果的に活用するための取組、地域や世界が抱える諸課題との統合的な対処に関する取組に関する行動目標を設定する。

【状態目標】
2-1:国民や地域が地域自然資源や文化活用して活力発揮できるよう生態系サービスが向上している
2-2:気候変動対策による生態系影響が抑えられ、気候変動対策と生物多様性・生態系サービスのシナジー構築・トレードオフ緩和が行われている
2-3:野生鳥獣との適切な距離が保たれ、鳥獣被害が緩和している

【行動目標】
2-1:生態系が有する機能の可視化や、一層の活用推進する
2-2:森・里・川・海のつながりや地域伝統文化の存続に配慮し、自然を活かした地域づくりを推進する
2-3:気候変動緩和に貢献する自然再生推進し、現状以上の生態系の保全と活用を進める
2-4:再生可能エネルギー導入における生物多様性への配慮を推進する
2-5:野生鳥獣との軋轢緩和に向けた取組を強化する

生物多様性国家戦略 2023-2030:生物多様性・生態系サービスの世界の現状と動向

「生物多様性国家戦略2023-2030」で取り組むべき課題
「生物多様性国家戦略2023-2030」の目指す姿・2050年ビジョン
「生物多様性国家戦略2023-2030」ミッション「2030 年ネイチャーポジティブ」
基本戦略1生態系の健全性の回復
基本戦略2自然を活用した社会課題の解決
基本戦略3ネイチャーポジティブ経済の実現
基本戦略4生活・消費活動における生物多様性の価値の認識と行動
「生物多様性国家戦略2023-2030」戦略実施に向けた基本的考え方

投稿者 smasa0810

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です