ネイチャーポジティブで求められること

ネイチャーポジティブとは、生物多様性の減少傾向から反転させ、2030年までに回復基調にのせる(ネットポジティブ)ための考え方とあらゆる営みである。

昆明・モントリオール生物多様性枠組の、2030年ミッション「自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め、反転させるための緊急の行動をとる」や、生物多様性国家戦略2023-2030の、2030年に向けた目標・ミッション「ネイチャーポジティブ(自然再興)の実現」を受け、企業にも様々な対応が求められる。

2030年までに「損失を止めることに加え、反転させる」ことが目標となり、自然を減らさない「保護・保全・削減」ではなく、「回復・再生」させることを念頭におく事業活動へのトランジションが必要。

「ネットポジティブ」とは

生物多様性におけるグローバル共通の2030年目標は「Net Positive by 2030」で非常に明快ある。

「Net Positive」とは元ユニリーバCEOのポール・ポールマン氏が提唱し、「ビジネスが環境や社会に与える悪影響をゼロにする」という旧来の発想を超え、「企業は事業活動を通じて、環境や社会にプラスの影響を与えることを目標にすべき」という考え方。
企業は「ネットゼロ」ではなく、「ネットポジティブ」を目指すべきとポール・ポールマン氏は主張する。

ネットポジティブな企業は「地球環境を積極的に再生・修復する企業」「社会を癒し強化しようとする企業」「壊れたシステムを見直すために他者と協働する企業」を指す。
ネットポジティブな企業とは、得る・奪う以上に与えることを目指す企業であり、まずマイナス影響を与えないことに加え、修復(restorative)や再生(regenerative)にも取り組む必要がある。

ネットポジティブ(Ner Positive)

引用:https://netpositive.world/what-is-net-positive/

企業はネットポジティブを目指すべき

ポール・ポールマン氏は、次のように主張する。
「人類は、経済格差や気候変動、生物多様性や地政学的な問題、不平等や人権問題など、多様な問題に対して、これまで以上にスピーディに取り組む必要がある。エネルギーを得る方法や食糧生産、移動の方法など、全てを革新して10~15年で実装せねばならない。
これまで社会課題の解決に向けた行動の主体は各国政府など公共セクターだったが、企業こそ問題に取り組むべき。世界経済の65%、雇用創出の80%、資金の流れの95%を担うビジネス界が動かねばならない。政府の動きを待つのでなく、自分たちが立ち上がるべき。」

「壊したら、その責任を取る」

ネットポジティブな企業は、どこかから取ったリソースを認識・集計し、何かしらの形で代替・再生する計画を立てる。全てのインパクト・影響や結果は自社にあるということ。これがネット・ポジティブへの出発点である。
自社による環境負荷を埋め合わせ、さらにプラスの効果も生み出す「ネットポジティブ」を実践すべき。

私たちが目指すべきは、人類の基盤である地球の生態系を取り戻すこと。
これまで、経済活動によってCO2排出だけでなく、化石燃料・地下資源の乱用、森林破壊などにより地球の生態系を痛めつけてきた。状況は危機的であり、マイナス影響をゼロにするだけではもはや十分ではない。プラスの影響を与えるようになること、つまり「企業が活動すればするほど自然が戻る、自然の機能が豊かになる」ことを、企業は究極の目標にしていくべき。

ネットポジティブに向けた野心的な目標設定を

ポール・ポールマン氏は、次のように主張する。
「心地のいい目標ではなく、気が引けるような目標を設定しないといけない。これは人類の未来がかかっていることだ。企業は達成できるとわかっているESG目標を設定しがちだが、人類が置かれている状況を考えると、無責任な行動となるだろう。」

問題の本質はリーダーシップの欠如

ポール・ポールマン氏は、次のように主張する。
「問題の本質はリーダーシップの欠如。
私たちは取り組むべき問題のほとんどに気づいていながら、何らかの理由でアクションを起こせないでいる。気候変動や不平等、生物多様性の破壊などは問題の「症状」にすぎず、本当の問題はリーダーシップの欠如にあると言える。そのリーダーシップを妨げているのが、そのリーダーの貪欲さ、無関心、利己主義である。
SDGsを達成するためには、企業のプロアクティブ(先見的)な意思決定と行動が欠かせない。
法律が変わるのを待っていては致命的に遅れてしまう。リーダーとなるには、国が動くよりも少し早めに正しい側に立つことが重要。そうすることで将来に向けてより良いポジションを確保でき、そこにあるチャンスをより早く捉えられる。

出典:
事業で社会・環境にプラス影響を 「ネット・ポジティブ」実現目指せ
「ビジネスにヒューマニティを取り戻す」 ユニリーバ前CEOポール・ポールマン氏語る、得る以上に与えるビジネスの在り方とは
ポール・ポールマン氏「野心的目標が最高の企業文化に」
ポール・ポルマン「異星人の目に『人類は愚かな集団』と映るだろう」

投稿者 smasa0810

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です