ネイチャーポジティブ経済

生物多様性国家戦略2023-2030のミッションは、2030 年までに『ネイチャーポジティブ:自然再興』を実現すること。

自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる

「ネイチャーポジティブ:自然再興」とは、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること」とする。
「2030 年ネイチャーポジティブ」実現に向け、健全な生態系を確保し、自然の恵みを維持・回復させ、自然資本を守り活かす社会経済活動を広げるために、環境・社会・経済の統合的向上を目指す地域循環共生圏の考え方を踏まえ、生物多様性保全施策に加えて気候変動や資源循環等の様々な分野の施策と連携し、取り組むべき課題に対応すべく、次の5つの基本戦略に沿って取り組む。

基本戦略1 生態系の健全性の回復

2030年までに陸と海の30%以上を保全する「30by30」目標の達成に向け、保護地域に加えてOECMによる保全取組を進め、生物群集全体の保全を図る。生産活動を含む多様な目的での陸域や海域の利用において、生物多様性への負荷軽減と質の向上を図る。
これらにより、気候変動等への強靱性にも寄与する生態系の健全性を回復させる。

基本戦略2 自然を活用した社会課題の解決

自然の恵みを活かして気候変動緩和・適応、防災・減災、資源循環、地域経済の活性化、人獣共通感染症、健康など多様な社会課題の解決につなげる。野生鳥獣との軋轢解消に向けた効果的・効率的な鳥獣管理を推進する。
これらにより、人間の幸福と生物多様性保全の相乗効果をもたらす自然の恵みを維持・回復させる。

基本戦略3 ネイチャーポジティブ経済の実現

政府と事業者等が連携し、事業活動と生物多様性・自然資本の関係の評価方法を確立し、経済に係る制度・システムの在り方を見直し、事業活動による生物多様性・自然資本への負荷低減し、正の影響を増大させる施策を実施する。
これらにより、事業活動において自然資本を持続可能に利用する社会経済活動を広げる。

基本戦略4 生活・消費活動における生物多様性の価値の認識と行動

新たな技術等も活用し現代に即した形で、生活・消費活動と生物多様性の密接な関わりを取り戻し、より深化させるための施策を実施する。
これにより、一人一人が自然資本を守り活かす社会経済活動を広げる。

基本戦略5 生物多様性に係る取組を支える基盤整備と国際連携の推進

生物多様性の評価のための基礎的な調査・モニタリングの充実や、利活用しやす
い情報の整備、取組の担い手確保等を進めるとともに、必要な法制上、財政上又は
税制上の措置その他の措置を講ずる。さらに、地球規模での生物多様性の保全への
貢献のため、我が国の知見や経験を活かした国際協力を進める。これらにより、国
内及び地球規模での生物多様性保全の取組全体を底上げする。

ネイチャーポジティブの考え方

ネイチャーポジティブについて

ネイチャーポジティブ「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」は、生物多様性における重要な考えである。
日本の環境政策において、ネイチャーポジティブ(自然再興)に加え、カーボンニュートラル(炭素中立)、サーキュラーエコノミー(循環経済)の3つの課題の同時解決により、質の高い生活をもたらす持続可能な新たな成長実現を目指し、これら施策の相互連携が重要になっている。

現在の地球環境の悪化傾向を2030年までに反転させるには、限られたリソースを最大限活用する必要があり、自然の有する多機能性を活かし、気候変動や生物多様性、社会経済の発展、防災・減災や食料問題など複数社会課題解決を目指すアプローチとしてのNbSが注目される。
生物多様性の損失を止め、反転させるためには、経済、社会、政治、技術全てで横断的「社会変革」が必要であり、異なる社会課題へのアプローチを統合するNbSは、その鍵になると期待される。

このようにネイチャーポジティブは、自然を社会・経済の基盤と捉えた上で、今まで通りから脱却し、社会・経済そのものの変革にアプローチするいう自然を回復軌道に乗せるための道筋を示す言葉でもある。

ネイチャーポジティブ経済について

ネイチャーポジティブ経済とは、自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させることに資する経済である。
世界経済フォーラム(WEF)の2020年の報告書では、世界のGDPの半分以上(44 兆ドル)は自然の損失により潜在的に脅かされており、ネイチャーポジティブ経済に移行することで2030年までに3億9500万人の雇用創出と年間10.1兆ドル(約1070兆円)規模のビジネスチャンスが見込めると指摘している。
「G7 2030 年自然協約」においてもネイチャーポジティブ経済の促進が主要な柱の一つとして位置づけられている。

基本戦略とネイチャーポジティブ

ネイチャーポジティブ戦略では、5つの基本戦略を通じてネイチャーポジティブの実現を目指す。
生態系の健全性を回復させること(基本戦略1)で人類の存続基盤が確保される。
その基盤の上で生じる社会課題を、健全な生態系の下で自然が発揮する機能を活用し解決すること(基本戦略2)で、自然から社会への恵みが持続的に維持され、回復する。
日々の暮らしで自然の恵みを享受し利用する中で、自然の恵みに対する理解が醸成され、自然や生態系への配慮や評価が組み込まれたネイチャーポジティブ経済を構築する(基本戦略3)とともに、人々の行動変容(基本戦略4)を促す。
こうした社会経済の変革により、自然資本を守り活かす自然共生社会へと近づき、更なる生態系の健全性に寄与する好循環が生まれる。そして基盤となる情報整備や国際連携を進めること(基本戦略5)が、これらの取組を支える軸となる。
こうした基本戦略に係る取組が効果的・持続的に循環することが、ネイチャーポジティブの動力となる。

生物多様性国家戦略 2023-2030:生物多様性・生態系サービスの世界の現状と動向

生物多様性国家戦略2023-2030とは
「生物多様性国家戦略2023-2030」の背景①:世界の現状と動向
「生物多様性国家戦略2023-2030」の背景②:日本の現状と動向
「生物多様性国家戦略2023-2030」で取り組むべき課題
「生物多様性国家戦略2023-2030」の目指す姿・2050年ビジョン
「生物多様性国家戦略2023-2030」ミッション「2030 年ネイチャーポジティブ」

投稿者 smasa0810

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